2018/06/05 改訂版 「親を捨てよ 家を出よう」「大学には行った方がいいの?」「好きなことをして生きるは正解か」を追記

夜の都会にこだまする『Come to Me』フランス・ジョリと人間の淋しさ

夜の都会にこだまする『Come to Me』フランス・ジョリと人間の淋しさ

法と支援の狭間 甘くない現実と愛の映画『チョコレートドーナツ』の続き。

誰しも自分が孤独だなどと口にできないものだ。いや、認めることさえ厭う人間が大半かもしれない。

車の中からゲイバーを遠目に眺める検事のポール・ブラガーも同様。
同性愛者であることを自覚し、パートナーを求めながらも、店に行くのは躊躇する。

それでも歌声に引かれて、ゲイバーの扉を開いてみれば、魅力的なドラッグクイーンが彼の心を誘う。

一人ぼっちで淋しい時は、私の所に来て。
周りに誰もいない時は、私の所に来て。
私は手を広げて待っているから、私の所に来て。
私なら慰められる
帰るべき相手を持たないならば、私の所に来て
私はあなたの為にここに居る。

僕は淋しい男 夢の世界に住んでいる
僕は全てを手に入れた 自分が本当に欲しいもの以外は……。

Come to me
When you're all alone and feelin' down
Come to me
When there's nobody else around
Come to me
I'm still waiting open-armed for you
Come to me
'Cause I will comfort you
When you've no one to turn to
I will be here just for you...

I'm a lonely man
Living in a world of dreams
I've got everything
But the one thing that I really need...

何の予備知識もなく見たら、おかまメイクにぎょっとするかもしれないが、物語が進むにつれ、だんだんキュートに見えてくるから、あら不思議。主人公のルディ・ドナテロが熱唱する『Come to Me』は孤独なゲイ達を慰めるように響きわたる。(歌はフランス・ジョリの吹替)

物語は1970年代。まだ同性愛者に対する世間の目は厳しく、カミングアウトなど言わずもがな。
同性愛者であることが職場にばれたら、仕事も人間関係も失われる。当時は、社会的に死刑宣告されるも同然だったろう。
だが、人が人を求める気持ちに異常も正常もない。
わかってくれる誰かを探して、夜の町を彷徨い歩くすべての人にフランス・ジョリは呼びかける。

あなたの周りに誰もないなら、私の所に来て。
両手を広げて待っているから。

それは母親に棄てられたダウン症の少年マルコも同じこと。
薬物中毒のマリアンナは、息子の世話もろくにせず、日がな一日、大音量でロックを流し、ドラッグに耽っている。
母親が逮捕され、一人ぼっちになってしまったマルコに救いの手を差し伸べたのは、ゲイカップルのルディとポールだった。

だが、二人がいかに大切に育てようと、社会的に到底認められるものではない。
ただただ『不適切』というだけで家庭裁判所に引き離され、薬物中毒の母親の元に送り返されたマルコは、愛する”両親”の姿を求めて、夜の町を彷徨い歩く。

こちらのビデオは、本物の歌手を目指して、デモテープを制作するルディが歌うスローバージョンの『Come to Me』。
ホームビデオ風の演出で、三人の幸福な暮らしが垣間見える。
この後、物語が急展開するだけに、切なさもひとしお。

なぜ愛する者同士が一緒に暮らせないのか。
同性愛者というだけで、否定されねばならないのか。

法というのは例外を認めたがらないものだと、つくづく。

こちらは1970年代のムード満載のフランス・ジョリのパフォーマンス。
踊りも、ファッションも、まるでサタデーナイト・フィーバーの世界。
だが、声に温もりがあり、古さを感じさせない。
歌手もこれぐらい、ふくよかなイメージがいいね。
今はあまりにロボット化、スリム化されて、少々、怖いところがあります(‥;)

フランス・ジョリの歌をもっと聴いてみたい方はSpotifyでどうぞ。

映画『チョコレートドーナツ』に関しては吹替版もおすすめ。
主演の内田夕夜、てらそままさきをはじめ、ダウン症の少年を演じる佐藤優吏、薬物中毒の母親を気だるく演じる山賀晴代も、みな演技が上手い。特に、内田さんのおネエ喋りは、ちっとも嫌みじゃないし、男同士のラブシーンも裁判の場面もさらりとこなしています。昨今、これだけ粒のそろった吹替版も珍しいでしょう。
全体にトーンが穏やかなので、作業用BGMとしてもおすすめです。悲しい話だけども、胸に染み入るような声の演技です。

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