哭きのサックス ガトー・バルビエリ ~恐れずに「好き」と言おう

2017年11月13日Jazz, マーロン・ブランド

日本では未だにランチされないSpotifyには「今週のディスカバー」という、非常に面妖な「あなたにお勧めのプレイリスト」が存在します。(2016年9月より日本でもサービスがスタートしました)

私が日々、愛聴している曲目をSpotifyが分析し、毎週、さまざまなお勧めをリストアップしてくれるサービスです。

そして、今週の月曜日に新たに追加されたのが、コチラ。(←アクシデントでファイルが消えました)

*

私の場合、クラシックやら80年代ポップスやらSmoothJazzやら、いろんな曲を聴くので、Chicagoの次にプッチーニが配されるという、けったいな様相に。

せめてジャンル分けしてくれたらいいのに・・と思うけど、そこまでは流石に無理ですもんね。

で、とりあえず流しで聞いていて、

「なんだ、このオヤジのだみ声みたいな哭きのサックスは……」

と思ったら、ガトー・バルビエリ (・ω・)

ガトーを知ったのは、マーロン・ブランド主演の映画『ラストタンゴ・イン・パリ』なのですが、リスナーの皆さんが口をそろえて仰るように、とにかく濃い、濃い、濃い!

タバスコ・ソースのようにネットリと熱く、都はるみのようにコブシのきいた音回し。

こんなこと言ったらナンですが、曲も演奏もとことん「オヤジっぽい」のです。大阪ミナミの千日前キャバレー、って感じ。

千日前キャバレーが悪いわけではないけれど、キタの新地のジャズクラブで、一杯2000円ぐらいするギムレットとか飲んでる『通』から見れば、泥臭い感は否めない。

今日も久々に聞いてみたけど、さびの部分で都はるみのようにコブシが回るのは相変わらず。

ああ、サックスが哭いてる、哭いてる・・・

そう、ガトー様のサックスは『哭く』のですよ

それも嘆きの泣きではない。

オレの魂を聞かせるぜ!! みたいな、熱い哭き。

こちらのエッセーに書かれている、

ガトー・バルビエリのことなど / 瀬崎 祐 
http://www.geocities.co.jp/Bookend/8960/page173.html

ガトー・バルビエリが好きだということは、実は、どうやら 大変に恥ずかしいことらしいのだ。彼のジャズは二流であり、実は 自分もガトーのファンであるということは、恥ずかしくて他人には言えない、と書いているジャズ評論家もいたぐらいだ

この感覚も分かるような気がする。

まあ、オヤジっぽいもんね。コテコテと熱いし。

少なくとも、キャンディー・ダルファーやコルトレーンやケニー・Gのように都会的でお洒落なイメージはない。

ところで、「一流のジャズ」って何?

評論家の認めたジャズが一流で、そうでないアーティストは二流ってこと?

人は一流の作品こそ感動すべきであり、二流の作品に心惹かれるのはお前自身が二流の証である! ってこと?

そんな訳ないよね。

これはガトー・バルビエリに限らず、クラシック音楽でも、小説でも、マンガでも、何でもそう。

●●のファンと言えば嗤われる。

お前には見る目がないと軽蔑される。

そういう恐れが、ファンの心を萎縮させると同時に、権威や五つ星評価や人気ランキングにすがっちゃう。

そして、インチキなものにも拍手喝采して、後で騙されたと地団駄を踏む(このネタ、ちょっと古いね)

自分の審美眼や判断に自信が無いのもあるけれど、周りに「あんなのが好きなの?」と嘲られるのが怖いという心理も往々にしてあるでしょう。

そう考えると、本当に好きなものを正直に「好き」と言えない社会って何だろうと思うし、ファンの「好きな気持ち」ってその程度なのかとも思ってしまう。

この際、大きな声で言いましょうよ。

●●が好きだ!

それが世間では三流と見なされていても、自称・通にバカにされても。

だってね。「これが好き」と思う気持ちって、本当はとても凄いことなんですよ。

人は何かを批判したり、嫌いになるのは得意でも、褒めて好きになるのは案外苦手。

なぜって、批判は自分のプライドを傷つけることはないけれど、好きな気持ちは時に己を傷つけるから。とりわけ、それが他人に否定された時は。

アーティストでも、作品でも、応援するのは勇気が要るし、時には好きな気持ちと心中する覚悟も要る。批判するより、はるかにリスキーです。

でも、見方を変えれば、誰かをそれだけの気持ちにさせる作品(アーティスト)って、やっぱり価値があるんですよ。世間の評価がどうあれ。

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ジャズ界の「評論家でさえ口をつぐんでしまう雰囲気」は、ガトー様自身もきっとご存じでしょう。

にもかかわらず、「オレはこうだ」と貫くところに『哭き』があるのだと思います。

だって、『芸術とは何か』と問われたら、己以外の何ものにもなれないことだから。

コルトレーンが一流だから、今はキャンディー・ダルファーが主流だからと、その都度、コロコロと聴衆におもねるような演奏したって、結局は何ものにもなれずに終わります。

ガトー様が相変わらず『哭きのガトー』で、通の間で二流呼ばわりされようと、そんなガトーを書庫の陰だか、スピーカーの合間から、こっそり応援し続けるファンがいるというのは、これも立派な才能であり、芸術ですよ。誰も真似できない上に、そのスタイルが自身の代名詞になってるんですから。
誰もが適当に聞き流す『おすすめプレイリスト』の中で、サックスの音色を聞いただけで、「おっ、ガトー様やん」と振り向いてしまうサックス・プレイヤーが、この世に何人いることやら。正直、大半は、「どれもいっしょ」やないですか?

そんな訳で、ちらとでも興味が湧いたら、ぜひSpotifyのガトー様のページを訪れて下さい。

ディープなファンには嬉しいラインナップでしょうか? 
『QUE PASA』や『Caliente!』もちゃんと収録されておりますよ。

のっけからビンビンに飛ばしている『Europa』。
FMラジオや喫茶店のBGMなどで耳にした人も多いのではないかと思います。
哀愁が漂いながらも、どこか「情熱♪熱風☆せれなーで」のようにコテコテしたムード、腹の底からひねり出すような演歌風のコブシ、お洒落なんだけど場末っぽく、「国道沿いのラーメン屋」を思わせる雰囲気が逆に個性的で、一度聞いたら忘れられません。
褒めるか、けなすか、どっちかにせぇや・・って感じのレビューで申し訳ないけど、「ああ、まだこの路線で頑張ってはるんや」って、ほんま感動しましたよ、Spotiryで最新アルバムを聴いた時は。

哭いてる、哭いてる!

この熱い世界を、ぜひ背中が煤けるまでお楽しみ下さい!

名曲『ラストタンゴ・イン・パリ』はこちらです。