愛と破滅の旋律 マーロン・ブランドの『ラストタンゴ・イン・パリ』

Jazz, マーロン・ブランド, 愛と耽美の映画

ガトー・バルビエリと『ラストタンゴ・イン・パリのテーマ』

私が『ラストタンゴ・イン・パリ』というタイトルを初めて知ったのは、技巧派で知られるサックス奏者、リッチー・コールのアレンジ曲がきっかけだ。

流れるようなピアノ伴奏に合わせて、人間ばなれしたサックスが炸裂する。

「ラストタンゴ・イン・パリ」というお洒落なタイトルとは裏腹に、パリの町を全力疾走するような迫力に魅せられ、来る日も来る日もカセットテープの録音に聞き入っていたものだ。

やがて、それが1970年代、「芸術か、猥褻か」で大問題となったベルナルド・ベルトリッチ監督の映画のテーマ曲と知り、映画にも大いに興味をもった次第。

それから、さらに時を経て、本当の作曲者はガトー・バルビエリと知った。ラテン・ジャズの名手で、カルトな人気を誇るテナー・サックス奏者だ。
ラストタンゴ・イン・パリのテーマ曲は、アルゼンチン・タンゴで有名なアストル・ピアソラに依頼する手はずだった……というエピソードを目にした記憶もあるが、この作品の主題曲について、これ以外のものは考えられない。ガトーはこのサウンドトラックでグラミー賞を受賞したというが、納得の出来映え。行き場のない哀しみを滲ませるように哭く、哭く、哭く。

こちらがダンスホールの場面で流れていたファイナル・ヴァージョンのタンゴ。

こちらは紳士淑女が踊っていた、正統派タンゴの楽曲。ガトー様のサックスが哭いてる、哭いてる。この曲も切なく美しい。

ガトー・バルビエリに関するレビューはこちら→ 『哭きのサックス ガトー・バルビエリ ~恐れずに「好き」と言おう

おまけ。プラハ交響楽団によるオーケストラ・ヴァージョンもドラマティックで美しい。

こちらはガトー・バルビエリのテーマに合わせた本格的なタンゴ。

ラストタンゴ・イン・パリとバター

ところで、なぜ『バター』かと言うと、生娘に乱暴する為に、あのマーロン・ブランドが!

偉大なるゴッドファーザーが!!

『バター』を使ったから。

しかも前でなくて、”後ろ”なんだよ。

……ショックでした。

しばらく、バターを見るのが哀しかったほど。

バターが見たい人はYou Tubeでどうぞ。

last tango in paris butter で検索すれば、ぞろぞろ出てきます(^^;

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撮影時、女優のマリア・シュタイナーはわずか19歳。
Youtubeにアップされた情報によると、最初、この場面はオリジナルの脚本にはなく、マーロン・ブランドのアイデアで取り入れられたらしい。
マリアは自分のエージェントか弁護士を呼ぶべきだったと述懐。
この場面で、彼女は本物の涙を流したと言う。

またWikiによれば、マーロン・ブランドは、前妻に『こんな恥さらしなセックス映画に出た人に父親の資格がない!』と言われ、全面的に親権を奪われてしまったとか。「役者として拷問のような体験だった」と語っていたらしい。

当たり前だわな。

しかし、ミッキー・ロークがこの作品に触発されて「映画『ナインハーフ』 恋と性の9週間半」を制作した――というエピソードも納得。

マリーナ・ショウの歌う『ラストタンゴ・イン・パリ』

ガトー・バルビエリの主題曲は、古今東西のアーティストにアレンジされ、今に語り継がれています。

こちらはマリーナ・ショウが歌う『ラストタンゴ・イン・パリ』。

歌詞もとてもロマンチックで、求め合う二人の心情をよく表しています。

「Making love not by choice, but by chance = 選んだのではなく、偶然によって愛し合う」という歌詞が象徴的ですね。

We are two illusions who touch in a trance
Making love not by choice, but by chance

We don’t exist
We are nothing but shadow and mist
In the mirror we look as we pass
Our reflections revealed in the glass

Don’t you know that the blood in your veins
Is as lifeless as yesterday’s rain
It’s a game where we come and conceal
The confusion we feel
As long as we’re nameless
Our bodies are blameless

You cried when we kissed
It was nothing but shadow and mist
Two illusion who touch in a trance
Making love not by choice, but by chance
To a theme we tore from their past
To a tango we swore was their last
We are shadows of dance

As long as we’re nameless
Our bodies are blameless

You cried when we kissed
It was nothing but shadow and mist
Two illusions who touch in a trance
Making love not by choice, but by chance
To a theme that we tore from their past
To a tango we swore was their last
We are shadows of dance

The last tango…
The last tango…

私たちは 恍惚に溺れる 二つの幻想
選択ではなく 偶然によって 愛を確かめ合う

私たちは存在しない
この世の何ものでもなく ただの影と霧にすぎない
鏡の中に 私たちが通り過ぎたように見つめる・・・?? (この部分がわからん・・)
私たちの姿が ガラスの中に現れる

あなたの血管の中を流れる血潮は 
昨日の雨のように 
死に絶えたものだということが分からないの?

これは私たちの秘かなゲーム
二人が感じる混沌たる世界

二人が名乗らない限り
私たちの交わりは 誰にも咎められることはない

二人が口付けた時 あなたは涙を流した
それはただの影と霧に過ぎなかったのに

恍惚たる二つの幻想は
選択ではなく 偶然によって 愛を確かめ合う

過去に涙する旋律に寄せて
これが最後と誓ったタンゴに寄せて
私たちは踊る影となる

ラストタンゴ
ラストタンゴ・・

DVD&CD

欲しい欲しいと思いながらなかなか手が出せなかったDVDとCD。やっと購入しました。

フォトカードの付いたDVD。

ラストタンゴ・イン・パリ

紙仕様のCDジャケットもお洒落です。

ラストタンゴ・イン・パリ

どちらも私の家宝です♪

英語・仏語、2カ国語による無修正版。日本語・英語字幕あり。
映像は1970年代のものだが、色あせた感じがかえって作品にマッチしている。
ヒロインの、ロングコートにミニのワンピース、黒い帽子とロングブーツのファッションもお洒落。
これはストーリーを追うより、人間の淋しい内面をとことん感じ取る映画だと思う。
「過激な性描写」の過激さは、エッチ度ではなく、「キリスト教的な」と解釈すべし。
マーロン・ブランドいわく「映画の世界から抜けられなくて、精神的におかしくなった」というほど、取り憑かれたような演技は、それだけで見物である。
一言では語り尽くせない、様々なテーマを感じさせる芸術作品である。

全編を貫く官能的で、哀愁に満ちたサウンドは、ラテン・ジャズの巨匠ガトー・バルビエリによるもの。
とりわけ二人が踊るラスト・タンゴのメロディは、これ以上ないほど甘く、切なく、愛の悲劇をいっそう際だたせる。
廃盤間近。信じられない。幻の名盤にならないように。

視聴はこちらでどうぞ。

ガトー・バルビエリ

あと忘れちゃならんのが、サックス奏者のガトー・バルビエリ。私も「ラストタンゴ」を通して初めて存在を知ったのですが、もう、ムンムンに熱い。これぞラテン! これぞサックス! 
濃厚ブルドッグソースな演奏は「たまに聞くと」心を癒やされます。(毎日は暑すぎて・・)

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初稿:2010年9月14日