海洋科学と子供の未来 ~知的好奇心と勇気こそが社会の糧

海洋科学と子供の未来 ~知的好奇心と勇気こそが社会の糧

科学者がノーベル賞を取ると、国を挙げてお祝いしますが、受賞は受賞、これまで積み重ねた結果に過ぎません。

次代の研究は既に始まっていて、鍵を握っているのは子供たちです。

子供らしい「なぜだろう」「こうしたい」が極まって、新たな発見や発明の手がかりとなるのです。

この場面は、仕事でもプライベートでも暗礁に乗り上げ、むしゃくしゃしたヴァルターが、気分転換に有人潜水艇プロテウスの格納庫を訪れ、小学生の見学グループと鉢合わせるものです。

先の深海調査の実況で、水深3000メートルの海底に広がる雄大な海山や不思議な生き物の存在を知った小学生らは、興味津々、有人潜水艇を眺めます。

子供が苦手なヴァルターは、渋々、説明を始めますが、いつの間にか自分自身が熱中し、その思いは未来へ繋がっていきます。

このパートは海洋小説『曙光』(Kindle版)の抜粋です。
詳しくは作品詳細をご参照下さい。

抜粋:海洋科学と子供の未来

※ 深海調査の実況に感銘を受け、地元の小学生らが有人潜水艇プロテウスの見学にやって来る。

「フォーゲルさん、今日は操縦しないんですか?」

「残念ながら、今日は操縦しない。そう簡単に有人潜水は出来ないんだよ」

「なんだ、つまんねぇ」

「『つまんねぇ』なんて言葉を使うんじゃない。お行儀の悪い子は切り刻んで魚の餌にするよ」

「魚なんか、いねぇもん」

「もっと詳しく調べたら何所かに居るかもしれないよ。実況を見て気付いたと思うけど、アステリアの海底には生き物の巣がある。砂の中、あるいは砂の層の下、今の段階では確かなことは言えないが、多分、至る所に生き物の巣があるはずだ」

「それは魚なの?」

「そうだね。魚みたいに骨があるかどうかは分からないけど、大きなミミズみたいな生き物や、顕微鏡でしか見えないような微生物など、いろんな生き物が棲息していると思うよ」

「それはどうやって調べるの」

「まずは船の上から音波を使って海底の地形を調べる。深さや形、何所にどんなものが存在するか、大まかに把握するんだ。海底の地形が分かったら、何かありそうな場所にポイントを絞り込んで、今度は無人機を投入する。船上からは、細かな色や形は見えないから、無人機の水中カメラや検査プローブを使って、そこに何があるか詳しく調べるんだ」

「プロテウスはいつ潜るの?」

「無人機でフォローできない大深度や複雑な操作が要求される場所、科学者が『自分の目で見たい』という場合など、必要に応じて船を出すんだよ。でも、それにはたくさんの人手が必要だし、何日も遠洋を航海しないといけない。とても経費がかかるから、いつでも、思い立った時に、とはいかないんだ」

一通り質問が終わると、引率の女性教師が「プロテウスの仕組みや部位の名称などを説明していただけますか」と求めた。彼はフーリエに小さなホワイトボードを借りると、バラストタンクや錘を使った潜航のメカニズムや、音波を使った位置測定の理論について、わかりやすく説明した。

そのうち眼鏡をかけた男の子が「僕、『オーシャン・ポータル』を見たよ」と口にした。
「アステリアでは、海水から食塩を作ったり、海底の石から金属を取り出したりしてるって。でも、どうして海水にいろんな物質が溶けてるんですか?」

「それは非常にいい質問だ。実は、このメカニズムはね、ステラマリスでも完全には解き明かされていないんだ。一口に『海水』といっても、惑星ができたばかりの頃と現代では全く成分が違う。何十万年、何百万年とかけて、徐々に変化しているんだよ。それはアステリアも同じだ。そして今、産業界の関心を集めているのが海底鉱物資源だ。ニムロディウムという金属成分が、アステリアの海水にもいっぱい溶け込んでいる。海水だけでなく、海底の堆積物にも。このニムロディウムはどこからやって来たんだろう? どうしてアステリアの海には存在して、ステラマリスの海には無いんだろう? 不思議な事がいっぱいだ。でも、それを解明するには、海はもちろん、惑星の成り立ちや内部の構造、マントルに含まれる成分など、いろんな現象を詳しく調べないといけない。そして、それを分析するには、化学や物理学、地学や生物学など、いろんな知識を総動員する必要がある。それが今、君たちが学校で理科や算数を学習している所以だ。海のことが分かれば、海水から工業原料を作ったり、海流を利用して発電したり、高速の船を造ったり、海上を自由に行き来できるボート型ハウスを作ったり、海底トンネルを掘ってローレンシア島とローランド島を海底特急でつないだり、いろんな可能性が広がる。その為にも、今から一所懸命に勉強して、海に詳しくなることだ。大きくなった時、立派な船長になったり、海中ロボットの技術者になったり、港湾を建設したり。知識と技術を活かせば、アステリアもいっそう豊かになる」

Product Notes

こちらは日本が誇る有人潜水艇『しんかい6500』のミッションです。

日本の海洋科学も、今後ますます発展して欲しいですね。

Kindleストア

下巻の冒頭部を収録した無料版PDFはGoogle Driveにあります。
閲覧は無料です。モバイルでも表示可能。

https://drive.google.com/file/d/0B-RKK97iKB34ZXZpU2RkanhQT1U/

Amazon Kindle 電子書籍

sanmarie*comに掲載していた【「親 死んでほしい」「親 殺したい」で検索する人が多いので】の電子書籍です。心理学者・河合隼雄の名著『家族関係を考える』で紹介された『内面的な親殺し』と、父親殺しを描いたギリシャ悲劇『オイディプス』の物語をベースに、なぜ「親 死ね」「親 殺したい」といった感情が芽生えるのか、乗り越えるには何が必要か、分かりやすく解説しています。
作品詳細と冒頭部の無料サンプルはこちら。https://novella.one/oya-book

小説とコラムカテゴリの最新記事

Top