社長の横でニッコリ笑うだけ? ~笑いながらも学ぶべきことはある

社長の横でニッコリ笑うだけ? ~笑いながらも学ぶべきことはある

※ 専務室でMIGの事業を学ぶリズに対して

「あまりに広範で、今は事業所の名前と事業内容と資本家計を把握するのが精一杯です。これほど大きな組織を父と伯母の二人で切り盛りしているのが不思議なくらい……」

「一から十まで手綱を取って指示しているわけではありません。エンタープライズ社がいい例でしょう。ここも実質、誰の采配で回っているか皆承知してます。要は一つの指針の元にどれだけ効率的に分業できるかです。僕だって、コンサルティング業務は個々の担当者に一任していますし、物流も、プラットフォーム支援も、現場で判断を下すのは各部署の責任者です。最初の人選が確かなら後は比較的やり易いですよ。むしろ人選を誤る辣腕経営者の方が危なっかしいぐらいです」

「それは理解できます」

「どこに、どんな人が配属されているか、それを見れば組織のことは一目瞭然です。経営者の器も知れます。お嬢さんもその辺りを学べば、将来に役立つのではないでしょうか」

「でも、できれば一つの職務を全うしたいと思っています。漠然と全体を見渡すのではなく、営業でも、在庫管理でも、一つのことに打ち込んで、仕事のノウハウを身に着けたい」

「気持ちは分かりますが、立場上、それは無理でしょう。お嬢さんにそのつもりはなくても、周りは気を遣います。皆と一緒に机を並べなくても、学べる仕事は他にもありますよ」

「それでも父が本気で私に望んでいると思いません。私にも何かの役割を期待するなら、接待ばかりに使ったりしないでしょう。夕べも、その前も、私に求めることといえば、父の隣でにっこり笑って場を和ませるようなことばかり。私はMIGのキャンペーンガールではありません」

社長の隣でにっこり笑っても、相手を不快にさせるだけの人もおりますよ。この世は決してコネや損得だけで動いているわけではありません。『やり手』と評判の経営者でも実際に会って話してみたら、週刊誌の提灯記事と大きくかけ離れていることもありますし、世間であまり注目されない子会社が驚くべき技術力を持っていたりします。資本やコネだけちらつかせても、本当に一流と呼ばれる人たちは見向きもしませんし、本当に得るべきところから信用を得られなければ大事は成せません。そして、その善し悪しを見抜く力は、マニュアルを読むだけでは決して身に付かないものです。『社長の隣でにっこり笑って』と仰るけども、笑いながらでも学ぶべき事はいっぱいありますよ

海洋小説『曙光』 MORGENROOD (上)

Amazon Kindle 電子書籍

sanmarie*comに掲載していた【「親 死んでほしい」「親 殺したい」で検索する人が多いので】の電子書籍です。心理学者・河合隼雄の名著『家族関係を考える』で紹介された『内面的な親殺し』と、父親殺しを描いたギリシャ悲劇『オイディプス』の物語をベースに、なぜ「親 死ね」「親 殺したい」といった感情が芽生えるのか、乗り越えるには何が必要か、分かりやすく解説しています。
作品詳細と冒頭部の無料サンプルはこちら。https://novella.one/oya-book

詩と引用カテゴリの最新記事

Top