2018/06/05 改訂版 「親を捨てよ 家を出よう」「大学には行った方がいいの?」「好きなことをして生きるは正解か」を追記

日本の小説

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戦後日本の宿命と社会の不条理を描く 森村誠一『人間の証明』 / 野性の証明 森村誠一

八杉恭子に人間の心が残っているなら、必ず自白するはずだ。無残に刺殺された黒人ジョニー・ヘイワードと西条八十の麦わら帽子の詩の関連を追う中、棟居刑事は一夏を霧積で過ごした家族の存在を突き止める。戦争直後の混乱と貧困を背景に、人種差別や階級格差を描いた本作は、単なる推理劇にとどまらない重厚かつ社会的な人間ドラマである。

悪女 VS キャリアウーマン 事件の印象が証言を左右する 松本清張の『疑惑』

一台の車が埠頭から海に突っ込み、鬼塚球磨子は救助されるが、車内に取り残された夫の白河福太郎は死亡する。前科四犯の毒婦の先入観から、球磨子の犯行という前提の元に裁判が進むが、彼女の弁護を引き受けた佐原律子の鋭い推理により、思いがけない事実が明らかになる。桃井かおりと岩下志麻、二大女優が火花を散らす野村芳太郎監督の傑作。

言葉の倉庫 仕事について

正しいからといって人が付いてくるわけではないし、正しければ報われるというものでもない。 『盗むな、殺すな』という話なら明快だが、『事業を拡張するか否か』という話になれば答えは無数にある。まして社会の方向を定めるとなれば、変化を求める者、現状を維持したい者、それこそ千差万別だ。 だからといって、正しい […]

宮沢賢治『銀河鉄道の夜』と蠍の火 ~まことのみんなの幸のために

どうしてわたしはわたしのからだを、だまっていたちにくれてやらなかったろう。そしたらいたちも一日生きのびたろうに。どうか神さま。私の心をごらんください、こんなにむなしく命をすてず、どうかこの次には、まことのみんなの幸のために私のからだをおつかいください。って言ったというの。

地獄という芸術 絵本『蜘蛛の糸』芥川龍之介

昔から芥川龍之介の『蜘蛛の糸』には大いなる疑問があります。 もし、カンダタが善い人で、蜘蛛の糸が切れなかったら、その後ろにぞろぞろ付いてきた数十万だか数百万だかの地獄の罪人も、お釈迦様は一緒にウェルカムしたのであろうか……ということです。 中には本当に業罰の必要な罪人もあるだろうし、たまたまラッキー […]

渡辺淳一の本当の名作 ~『無影灯』『愛人』『化身』『わたしの女神たち』etc

『失楽園』ブームがあまりに強烈だったため、渡辺淳一といえば「性愛小説家」というイメージがありますが、私は『女性に優しい作家』として読んでいます。 特に過去のエッセイなど読んでいると、とにかく女性を見つめる眼が優しい。 ブスと呼ばれる女性にも一点の美しさを見出すような柔らかい感性が感じられます。(昔は […]

死を受容する必要なんか、ない / 渡辺淳一の『無影灯』

患者は死期が近づいたら駄目なことを自然に自分で悟る。われわれが改めて言う必要などはない。患者は黙っていても助からないのを悟る。その時、俺は助からないのではないかとか、癌なのに嘘をついた、などと怒ったりはしない。彼らはそんなことを考えたくはないのだ。自分は駄目だとは思いたくない。だから、そんな怖いことは訊いてこない。医者は嘘をついていると知りながら嘘のなかに入っていこうとする。われわれがとやかく言わなくても、向こうから入ってくる

劇画家・池上遼一の魅力『近代文学名作傑作選』& 耽美傑作集『肌の記憶』

心卑しい天才絵師が、帝から命じられた「地獄変」の屏風絵を完成させるため、「世にも美しい女が火に焼かれて悶え死ぬところが見たい」と申し出たところ、帝の計らいで実現する。だが、絵師の目の前で火にかけられたのは、なんと彼が心から愛する一人娘だった…… 芸術家のどうしようもないエゴと、人の心に巣くう邪悪さを『地獄変』という一枚の絵に描き上げた芥川龍之介の短編。

江戸川乱歩の『芋虫』~老人介護を想う

眼の他には、何の意志を発表する器官をも持たない一人の人間が、じっと一つ所を見据えている様子は、こんな真夜中などには、ふと彼女に不気味な感じを与えた。どうせ鈍くなった頭だとは思いながらも、このような極端な不具者の頭の中には、彼女たちとは違った、もっと別の世界が開けているのかもしれない。彼は今その別世界を、ああしてさまよっているのかも知れない。などと考えると、ぞっとした。

三島由紀夫&美輪明宏『黒蜥蜴』妖艶と美麗の極致

ねえ、鏡のなかの紳士。明智ってすばらしいと思わない? そこらに沢山いる男とちがって、あの男だけが私にふさわしい。でも、これが恋だとしたら、明智に恋しているのはどの私なの? 返事をしないのね。それならいいわ。また明日、別の鏡に映る別の私に訊くとしましょう。じゃ、さよなら。

側溝男と江戸川乱歩の『人間椅子』

道端の側溝に何時間も潜み、女性の下着を覗き見ようとした側溝男のニュースを聞いて、江戸川乱歩の『人間椅子』を想起したのは私だけではありますまい。 恐らく、本物のフェチズムに精通している方から見れば、側溝男と人間椅子もまた微妙に違うんだよ、という意見になるかもしれませんが、そのあたりの細かな指摘はご容赦 […]

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