2018/06/05 改訂版 「親を捨てよ 家を出よう」「大学には行った方がいいの?」「好きなことをして生きるは正解か」を追記

愛と死の世界・ワーグナーの楽劇『トリスタンとイゾルデ』に酔う / ルネ・コロ&カルロス・クライバーの名演

愛と死の世界・ワーグナーの楽劇『トリスタンとイゾルデ』に酔う / ルネ・コロ&カルロス・クライバーの名演
「この世を離れて私はあなたのものになる」愛は突き詰めれば死に至る、究極のエロスとタナトスを描いたワーグナーの傑作。元となったジョゼフ・ベディエ編 「トリスタンとイズー物語」 の抜粋も交えながらオペラの見どころと名盤を紹介(Spotifyで視聴可能)。雑誌『音楽の友』に掲載されたコラムも併せてお楽しみ下さい。
この記事は、1998年、初めてホームページを立ち上げた時、一番最初に作成したものです。

STORY

楽劇 「トリスタンとイゾルデ」は、1857~59年、ドイツ出身の作曲家リヒャルト・ワーグナーによって作曲され、1865年、ミュンヘンの国立宮廷劇場にて初演されました。
中世の情熱恋愛神話ともいうべき「トリスタンとイゾルデ」の物語をベースに作曲されたこの楽劇は、究極の「愛と死(エロスとタナトス)」を描いた大作です。

【第一幕】

コーンウォールのマルケ王に仕える騎士トリスタンは、アイルランドの姫イゾルデを王の花嫁に迎えるべく、船を一路コーンウォールへ走らせています。
しかし、花嫁となるイゾルデの心は嵐のように波立ち、立派な騎士であるトリスタンに憎しみさえぶつけます。
姫の身を案じる侍女ブランゲーネは、少しでも胸の苦しみを和らげようと、姫に優しく問いかけました。
するとイゾルデはトリスタンの深い罪について語り始めます。

トリスタンは、かつての婚約者モロルト公を討った憎い仇でした。
なのにトリスタンは、モロルト公との激しい戦いで負った傷を癒すため、名を「タントリス」と偽り、霊薬を扱うイゾルデの前に現れたのです。
彼女は「タントリス」がトリスタンだと気付きながらも、その眼差しにうたれ、モロルト公の仇を討つことができませんでした。そして、彼の傷を霊薬で癒し、国に帰してやります。

タントリスは「トリスタン」として再び彼女の前に現れました。
しかし、それは彼女をマルケ王の花嫁としてコーンウォールに連れ帰る為だったのです。

イゾルデは愛してもいない王に嫁がねばならない恥辱と、トリスタンへの愛の苦悩から逃れる為、死の薬でもってトリスタンに復讐することを誓い、ブランゲーネに死の杯を用意するよう命じます。
しかし、トリスタンもまた王への忠義からイゾルデへの愛を胸の奥にひた隠しにしていたのでした。

トリスタンは罪を償い、愛の苦しみから逃れる為に、イゾルデの差し出した死の杯をあおります。
そしてイゾルデも彼の手から杯を奪うと、その半分を飲み干します。
ところが二人に訪れたのは死ではなく、めくるめくような愛の悦びでした。
ブランゲーネが杯に注いだのは、死の薬ではなく、愛の媚薬だったのです。

船は、愛に酔う二人を乗せて、コーンウォールに到着します。

【 トリスタンとイゾルデ】J.W.ウォーターハウス Jhon William Waterhouse
【 トリスタンとイゾルデ】J.W.ウォーターハウス Jhon William Waterhouse

【第2幕】

マルケ王はトリスタンの忠義を称え、イゾルデを優しく迎えます。
しかし、分かちがたい愛の絆で結ばれた二人は、もう一時も離れていることができません。
二人は昼の光が消え去るのを待って、夜の園で逢瀬を重ねます。

「おお、降り来よ、愛の夜を、
我が生きることを忘れさせよ。
汝のふところに我を抱き上げ、
現世から解放せしめよ」

「こうして私たちは死ねばよい、
離れずに、永遠にひとつとなり、
果てなく、目覚めず、不安なく、名もなく、
愛に包まれ、我らかたみに与えつつ、
愛にのみ生きるために!」

「名づけることなく、別れることなく、
新たに知り合い、新たに燃え、
無限に永遠に、一つの意識に、
熱く焼けた胸の至上の愛の歓楽!」

(第二幕 より抜粋)

しかし、二人の愛の夜も、臣下メロートの策略によって王の前に暴かれます。
二人の裏切りを知ったマルケ王は、深く嘆き悲しみます。
メロートと剣を抜き合ったトリスタンは、メロートの剣に自ら身を投げ出し、深い傷を負うのでした。

Liebe ‐【 愛 】グスタフ・クリムト Gustav Klimt
Liebe ‐【 愛 】グスタフ・クリムト Gustav Klimt

【 第三幕 】

トリスタンの忠実な従者クルヴェナールは、傷ついたトリスタンを故郷カレオールの城に連れ帰り、イゾルデに使者を送ります。
トリスタンの深い傷と苦しみを癒せるのは、この世にただ一人、イゾルデだけだからです。
トリスタンは半ば「夜の世界(=死)」に入りながらも、イゾルデへの強い想いからその中に安らぐことができません。
身悶えするような苦しみの中で、イゾルデの到着を待ち焦がれます。

が、ついにイゾルデを乗せた船がカレオールに到着しました。
トリスタンは輝く陽に向かい、歓喜の声を上げます。
そして彼はイゾルデの名を呼びながら、彼女の腕の中で息絶えるのでした。

イゾルデの後を追って来たマルケ王は、トリスタンの死を知り嘆き悲しみます。
侍女ブランゲーネから愛の媚薬の事を聞かされた王は、二人を夫婦として祝福する為にやって来たのです。
しかし、トリスタンの亡骸にすがるイゾルデには、もう誰の声も届きません。
イゾルデは神々しい光に包まれながら、トリスタンの魂を追って「愛の死(=Liebes Tot)」に至るのでした。

聖母被昇天(アスンタ)

私の大好きなティツィアーノの名作「聖母被昇天(アスンタ)」です。
制作されたのは、1516~18年。
ヴェネツィアのサンタ・マリア・グロリオーサ・デイ・フラーリ聖堂の主祭壇画として描かれました。
690×360cmもの大作です。
聖母マリアの魂と肉体は、死後三日目、輝く光と歌声に包まれながら、たくさんの天使によって父なる神の待つ天国に運ばれて行きました。
画面の下には、驚愕と悲しみのうちにこの様を見守る十二人の使徒が描かれています。

聖母被昇天 ~ティツィアーノ
聖母被昇天 ~ティツィアーノ
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