無料エディタの『Typora』といえば、プログラマー向けのMarkdwonエディタとして有名ですが、小説、コラム、論文など、長文執筆向けアウトラインプロセッサとしても有用です。
本サイトでは、便利なライティングツールとして、『Scrivener』や『NanaTerry』『秀丸』も紹介していますが、『無料』『文面が見やすい』『階層が分かりやすい』という点では、Typora がダントツかなと思います。
ちなみに、無料のNanaTerryとの違いは次の通りです。
Typora | NanaTerry | |
アウトライン | 文中に見出しタグを挿入して階層化 | ノードの親子関係で階層が作られる |
操作性 | ツールバーはなく、メニューもしくはショートカットで見出しや書体を設定。初心者でも楽に入力できるが、基礎的なHTMLタグの知識はあった方がよい。 | ツールバーで直観的に操作できる。初心者向け。 |
画像やリンクの挿入 | 可能 | 可能 |
文字の装飾 | 太字、下線、打ち消し線、コメントのみ。ベーシックなテキストエディタに近い。 | リッチテキスト形式で、フォントサイズや文字色など、細かなカスタマイズが可能。WORD的。 |
エクスポート | PDF、HTML、WORD、RTF、EPubなど、様々な形式に対応 | テキスト形式 |
Typoraの特徴
すっきり見やすいアウトラインプロセッサ
Typoraの特徴は、元々がMarkdown Editorで、テキストに階層を持たせることができる点です。
h2 h3 といった見出しタグ、bやといったフォーマットのタグを挿入することにより、アウトラインプロセッサとしての機能も持ち合わせるわけですね。
ちなみに、青空文庫から拝借した整形済みのXHTML文書を貼り付けると、このように、自動的に階層化されます。
普通に文章を入力するユーザーには、見出しタグやふぉーまっとのタグは見えませんが、Typoraの方で分析して、WORDのように見栄えよく整理してくれるわけですね。
見出しタグやフォーマットのタグを知らなくても、メニューから選択して、単語や文章に充てることができます。
NanaTerryやWORDのように、文字色を変えたり、フォントの大きさを変更したり、細かなカスタマイズはできませんが、単純にアウトラインプロセッサとして使う分には十分ではないでしょうか。
カラフルなテーマ
エディタの外観は、下図のように、様々なテーマが公開されています。
公式からテーマのCSSをダウンロードして、指定のフォルダにコピーするだけで、簡単にデザインを切り替えることができます。
ただ、フォントの大きさや見出しの色使いなど、自分仕様にカスタマイズするには、HTMLやCSSの知識が必須なので、そこだけ初心者にはハードルが高く感じるかもしれません。
しかし、デフォルトの「Github」スタイルだけでも十分に綺麗なので、そこまでいじる必要もないと思います。
フォントファミリーとフォントサイズ、見出しの背景色をいじるぐらいなら、数カ所の編集で済みます(後述)
ファイル+アウトラインで二重の階層化が可能
Typoraの第二の特徴は、複数のファイルをグループ化し(同一フォルダ)、階層を二重化できる点ですね。
下図なら、「江戸川乱歩シリーズ(フォルダ)」に、「D坂」「お勢登場」「黒蜥蜴」といったファイルを作成することで、ライブラリ化することができます。
たとえば、『STORY』というフォルダに、「Part1』『Part2』『Part3』...と複数のファイルを作成すれば、STORYのライブラリ+各ファイルのアウトラインを一つの画面で可視化できるわけです。
NanaTerryや秀丸エディタは、こうした二重の階層化ができないので、文章が長くなってくると、ちょっと不便なんですね。
シンプルで分かりやすいメニュー
メニューもシンプルで非常にわかりやすいです。
最低限の機能しか備わってないので、執筆に集中できます。
Scrivenerのように多機能だと、ついつい、あちこちいじってしまいますのでね。
ファイル操作に関するメニュー
『新規作成』『保存』『インポート&エクスポート』『印刷』と基本の操作ができます。
編集に関するメニュー
『切り取り』『コピー』『貼り付け』(プレーン、Markdown、HTML、スタイルなし)、選択、数式ツールなど、基本の機能が揃っています。
テキスト入力なら、十分ですね。
段落に関するメニュー
『見出し』『見出しレベルの上下』『コードブロック』『リスト』など。
テキスト入力なら、『見出し』と、『脚注』『参照リンク』『水平線』『目次』ぐらいですね。
目次は、見出しのレベルに応じて、自動生成されます。
黒蜥蜴の目次はこんな感じ。
『編集』 > 『目次』 から任意の場所に挿入することができます。
閉じたり、開いたりはできません。
フォーマットに関するメニュー
『太字』『強調』『下線』『打ち消し線』など。
文字色やハイライトなどは無いですが、CSSをカスタマイズすれば、強調にハイライトを挿入したり、文字色を変えたりはできると思います。
『リンク』『画像の挿入』も可能。
表示に関するメニュー
『サイドバーの表示切替』『アウトライン』『ファイルツリー』『フォーカスモード』『タイプライターモード』『フルスクリーン』『常にトップに(固定表示)』など、画面の切り替えができます。
テーマに関するメニュー
テーマはワンクリックで変更可能。
表示したいテーマを選択して、いったん、アプリケーションを終了し、再起動すれば、指定したテーマに切り替わります。
ダウンロードとインストール
公式サイトの『Download』からOSに合ったインストール実行ファイルをダウンロードします。
英語サイトですが、すぐに分かります。
任意の場所にダウンロードしたら、クリックして、インストールを実行するだけです。
あとはOSの言語に合わせて、日本語メニューが表示されます。
エディタの設定
ファイル > 設定 から、エディタの設定を行います。
特にカスタマイズするところは無いです。
起動時のアクション、自動保存、ショートカットキーのカスタマイズ、デザイン、エディタ機能など。
CSSでテーマをカスタマイズする
テーマを変更したい場合は、公式の『Theme』から気に入ったテーマのファイル一式をダウンロードします。
https://theme.typora.io/
たとえば、Xydark というテーマなら、Donwload をクリックして、公開されているテーマファイルをダウンロード(圧縮フォルダ)
解凍すると、次のようなファイルが梱包されています(テーマによって内容はまちまち)
次に、Typoraの『設定 > 表示』 の下方、『テーマフォルダを開く』をクリック。
C:\Users\MOKO\AppData\Roaming\Typora\theme
この時、xydarkフォルダはxydarkフォルダのまま、CSSファイルは個別にコピーします。
いったん、Typoraを終了し、再起動して、メニューの『テーマ』を確認して下さい。
Xydarkを選択して、もう一度、再起動して、ファイルを開いた時、デザインが変わっていれば成功です。
このままだと、テキストが背景に溶け込んで見えないので、CSSを編集して、フォント色を変更します。
このテーマの場合、CSSのrootで基本のスタイルを設定しているので、font-color: #ffffff の白色に変更。
CSSを上書き保存して、Typoraを再起動します。
文字色=白が反映されました。
テーマカスタマイズの煩わしい点は、プレビュー画面を見ながら、CSSを編集できないこと。
いちいち、Typoraを再起動して、ちゃんと反映されたかどうか、確認しなければならない点です。
テーマ作者によって、CSSの記述も全く異なります。
なので、あまり凝ったテーマを選ばず、基本の『Github』をカスタマイズするのが一番無難かと。
ちなみに、GithubのCSSは、font-famiy を Open Sans で統一。
全体のフォントサイズは、html の font-size 、行間は body の line-height 。
それぞれの見出しは、h2 h3 h4 ... を編集して、フォントサイズや行間を調節しています。
background-color を追加すれば、ハイライト表示も可能。
GithubのCSSはシンプルで分かりやすいです。
終わりに: 最初の草稿
執筆の順序としては、『XMind』でアイデアをまとめた後、マップを見ながら、Typoraで最初の草稿、といった感じでしょうか。
私は『秀丸エディタ』をメインで使うので、Typoraはストーリーラインの組み立て、という感じですね。
Typoraの場合、NanaTerryや秀丸エディタのように、アウトラインの見出しをドラッグ&ドロップして、前後を入れ替える、ということができません。
見出しのレベルを上げる / 下げる だけなので、その点はちょっと不便ですが、流して書くには便利なエディタだと思います。
テキストエディタとワードプロセッサの真ん中といったところでしょうか。
無料で、日本語環境に完全対応で、自動アップデート機能も備わってますので、興味のある方は、ぜひお試し下さい。