魅力的な悪役を作ろう ~主人公を活かす秘訣

創作初心者さんの中には、「自分の作ったヒーロー/ヒロインを好きになって欲しい!」という方がたくさんいらっしゃると思います。

自分の作った主人公に人気が出て、有名なイラストレーターにイラストを描いてもらったり、キャラクターグッズになったり、二次創作でいじられたり、作家冥利に尽きるのではないかと思います。

だからといって、ヒーロー/ヒロインだけで物語は成り立ちません。

ヒーロー(以下、ヒーローで統一)の際立たせるには魅力的な悪役が必要です。

アンパンマンには、バイキンマン。

ガッチャマンには、ベルク・カッツェ(おかまみたいな声でしゃべる奴)。

ルーク・スカイウォーカーには、ダース・ベイダー。

愛されるヒーローには、必ず対となるユニークな悪役が存在し、ヒーローの活躍を際立たせます。

ルーク・スカイウォーカーにしても、ダース・ベイダーが無ければ、ただのチャンバラ男です。

あの場面で、ダース・ベイダーが I am your father. と告白して世間がひっくり返り、最終章で、息子と父親として和解したから、名作と成り得たわけで、あれがまったく違う設定であれば――たとえば、悪の皇帝に仕える、凄腕の剣士でしかなかったら、ここまで物語に入り込めなかったと思います。

アニメの悪役で印象的なのは、キューティーハニーに登場するシスタージルとパンサーゾラでしょう。当時のヒーローものといえば、悪役はたいてい男性で、世界を支配するのが目的なんですけど、あの人たちは『姉妹』で、ハニーを付け狙う動機が「世界中の宝石を独り占めしたい」という、非常に女心に訴えかける設定だったから、当時、永井豪作品にはあまり縁の無さそうな低学年の女の子までハートを鷲掴みにされたんですね。

しかも、シスタージルとパンサーゾラは「姉妹」で(多分、年子だろう)、お姉さんの方(パンサーゾラ)がずいぶん偉そうで、妹(シスタージル)が襲撃に失敗しては責められる、というパターンが、実際に姉妹で育っている女の子には非常に共感できる内容だったのです。ファンの女の子の中には、”パンサーゾラ&シスタージルごっこ”にはまった人もいるのではないでしょうか。

姉「お菓子をとってこい」
妹「はい、お姉さま」

みたいな。

もし、キューティーハニーの敵が男性で、「世界支配」が目的であったら、男性ファンは喜んだかもしれませんが、女の子はそこまで感情移入できなかったし、むしろ、変身のシーンなどに嫌悪感をもったかもしれません。

いわば、女同士のキャットファイトで、五社英雄監督の映画みたいに、女と女が取っ組み合い、美しい装束が畳の上に舞い散る(着物の裾がはだけて、むっちりした太ももが覗くような演出)……みたいなノリだったから、女の子にもすんなり受け入れられたのだと思います。

そんな風に、格好いいヒーローだけで成り立つ作品はないし、またヒーローの動機を際立たせるには、悪の側の確固たる主張が不可欠です。

世界征服でもいい。世界中の宝石を独り占めしたい、でもいい。

読み手が納得するような経緯です。

その絶対悪に対して、初めて、ヒーローの主義信条が生きてくる。

ただ単に「世界平和」を振りかざしても、そんなのは子供でも分かりきっている話です。

そうではなく、なぜこの悪役に対して、ヒーローは命を懸けて戦わなければならないのか。

そこをしっかり描かないと、読み手はヒーローにまったく感情移入できないし、いくらヒーローに高邁な理念があっても、理念だけが空回りして、「毎日の戦い、ごくろうさん」で終わってしまうんですね。

その点、人気の高いアクション映画は「悪役の動機」というものを非常にしっかり描いています

愛する我が子を殺されたり、罪なき市民が人質に取られたり。

「○○国で殺人ウイルスが開発された」なんて話も、世界情勢を知っておれば、「うむ、○○国ならやりかねん」みたいな前提で見ているわけですよ。

変な喩え、「日本の細菌研究所で開発された殺人ウイルスが、火星人のスパイに奪い取られ、世田谷区にお住まいの鈴木さんの家にばらまかれた」なんて話、誰も納得しないし、丹波篠山のおばあちゃんが火星人のスパイと命を懸けて闘う必然性も感じません。

物語としてあっても構いませんが、相当に工夫を凝らさないと、読み手が膝を叩いて納得する……という流れにはならないでしょう。

とういことは、「悪役」「悪の動機」「主人公の主義信条」、これらに納得のいく連なりが無いといけない。

そこで必要なのが、読み手が納得する、理論的な裏付けです。

トム・クルーズが○○のスパイと闘う。カッコいい、やっつけろ、と思う。

じゃあ、どこの国のスパイでもいいのか。

悪のツールは、殺人ウイルスでも、小型核兵器でも、ウケそうなものなら何でもいいのか。

そんなわけないですよね。

そこにトム・クルーズが登場する必然性がないと、観客はしらけて、ただのアクション映画で終わってしまいます。

では、どうすれば、トム・クルーズの行動や台詞の一つ一つに説得力を持たせることができるのか。

それには「悪の動機」と「悪役の造形」がしっかり作り込まれていなければなりません。

その為の情報収集であり、勉強です。

読者にしても、観客にしても、政治経済や、宇宙科学や、スポーツや、いろいろな分野に一見識を持った人が多いです。

「火星人のスパイとか、面白そうじゃん!」のノリで作ってしまうと、「なんで火星人のスパイが世田谷区にお住まいの鈴木さんの家を狙うんですか?」という感想になってしまう。

そうではなく、ここ数年、○○国と××国が緊張関係にあるとか。
世界中の科学者が、遺伝子操作による殺人ウイルスの脅威に警鐘を鳴らしているとか。

そうした、普遍的に知られる情報を取り入れることで、いっそう悪の動機がリアルに感じられるし、それと闘うヒーローに共感できるわけですね。

その為には、いろんな事を幅広く知らないといけないし、何に対しても疑問や好奇心をもち、悪の動機や主人公の主義信条を我が物とすることです。

ヒーローだけ工夫を凝らしても、独り善がりなアクションで終わってしまいます。

物語において、光と影は一体。

素晴らしい悪役がいて初めて、主人公が生きるのです。

この記事を書いた人

石田 朋子のアバター 石田 朋子 サイト管理人

作家・文芸愛好家。1998年よりホームページを運営。PCと車が大好きな80年代のサブカルファン。WordPressとは10年以上の付き合い。普段はぼーっとしたお母さんです。小説より漫画とアニメに詳しいヲタで、昭和の名作漫画は大半の台詞を空で言うことができます。東欧在住。本を買ってくれたら喜びます。

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